2017 年 11 月に技能実習法が改正されました。
この法改正で新たに外国人技能実習機構を設立して、監理団体等の監督強化を打ち出す一方で規制緩和が行われています。
一つは技能実習業種の拡大。
これにより新たに「介護」が技能実習職種に加わったことが話題になりました。更に従来最長 3 年だった技能実習期間に関して、一部優良監理団体に限って最長 5 年への期間延長も行われています。
この記事では、人手不足を解消したい製造業経営者に対して、外国人研修制度とベトナム人の相性の良さについて解説します。
またベトナム人と製造業の相性の良さに言及します。
外国人研修制度、シャア2位はベトナム人
日本で働く外国人労働者(127 万 8670 人、2017 年 10 月時点、以下同)のうち、ベトナム人は24 万 259 人の 18.8%を占 めています。
距離的に近く人口も多い1 位の中国(37 万 2263 人、29.1%)に次ぐ2位です。
ベトナムの外国人労働者の特徴を見てみると、留学生と技能実習生が多いのが特徴です。全留学生比率が 20%に対してベトナム国籍者の留学生比率は 41%、技能実習は全国籍の 20%に対してベトナムは 43.9%、両者とも2倍近い比率です。
その理由は、中国での人件費上昇に伴い、「チャイナ・プラス・ワン」という動きで、ベトナムに多くの日本企業が生産拠点を移しているということでしょう。
短期的に日本で働きたいという人だけでなく、長期的な視野を見据えた ベトナム人の多くが留学や技能実習という形で日本に来ていると考えられます。
日本企業のベトナム進出も活発
日本企業のベトナム進出は活発です。
ベトナム現地法人(日本企業)の売上は、 中国内の売り上げが伸び悩む一方でベトナムでの増加基調は続いています。
どんな業種が多いかというと、製造業の割合が高く、80%を超えています。なかでも自動車等の輸送機械製造業の割合が高いですね。
サービス業はその他の地域と比べれば割合が小さいが、 建設業や運輸業の割合が全地域平均よりも高いことは特徴的。
日本企業のベトナム進出 とベトナム人労働者の関係
製造業を中心とする日本企業のベトナム進出に伴い、ベトナム人労働者が日本に来 ていることは産業別ベトナム人労働者数のデータでも確認できます。
産業別の外国人 労働者数の割合を見ると、全体では製造業の割合は 30.2%だが、ベトナムでは 36.0% と製造業に従事している割合が高いですね。
また、建設業の割合が全体の 4.3%に比べて 9.8%と高いことに加えて、宿泊業、飲食サービス業の比率が全国籍の 12.3%に比べ てベトナムは 15.4%と高いことも特徴的です。
外国人技能実習制度の概要
外国人技能実習制度は、日本の海外現地法人における社員教育研修制度をベースと して 1993 年に制度化された国際協力推進のための制度であり、日本における在留資格です。
日本の技能や技術を開発途上地域の経済発展に活かしてもらうことを目 的としており、基本理念として、労働力の需給の調整手段として行う必要があります。
資格は、入国 1 年目(技能習得・第 1 号)、入国 2・3 年目(技能習熟・第 2 号)、入国 4・ 5 年目(技能熟達・第 3 号、優良団体のみ)の 3 つに分かれ、長期滞在したい外国人は、最長 5 年間の在留が可能です。1年目を通過して、2 年目に移行する場合は、農業、漁業、建設、食品製造、繊維・衣服、機 械・金属、その他の業界における 77 職種、139 作業に限定されます。
技能実習生受入人数を見てみると、従業員 301 人以上の場合、第 1 号で常勤換算職員数の 5%、第 2 号で 10%。 優良団体は、第 1 号が 10%、第 2 号が 20%、第 3 号が 30%です。
受入方式は団体監理型が中心
技能実習生の受入方式は、企業単独型と団体監理型の 2 つに分かれるが、2017 年末 時点で 96.6%が団体監理型である。
外国政府と日本国政府が取り決めを行い政府認定の送出機関が候補者を選定し、日本語や技能教育を行い、この技能実習生を日本国内の事業協同組合や商工会等の非営利団体(監理団体)が受け入れ、日本の企業等との雇用関係を結び、技能実習をします
技能実習生を日本で直接受け入れるのが監理団体です。
監理団体は営利を 目的としない法人で、第1号技能実習生に対する日本講習や、実習実施企業への定 期監査を行います。
一定の基準を満たす優良団体を一般監理団体、それ以外を特定監理団体と呼びます。
ベトナムを中心に拡大する技能実習生
外国人労働者数は約130 万人。
労働者のうち外国人技能実習生も 2012 年の 13 万人から 2017 年 26 万人と 1.9 倍に拡大している。
国籍別技能実習生数の推移。
2012 年末では最大の中国が 11 万人と全体の 76%を占 めていたが、直近 2017 年末では 8 万人と減少し全体の 28%までシェアは低下しています。
急拡大したのがベトナムです。2012 年では 2 万人弱でシェア 11%だったが、 2016 年には中国を抜き、2017 年は 12 万人で全体の 45%まで拡大中。
ベトナム人技能実習生が増加した背景としては、今回の視察先の送出機関によると、 若年人口の多さに対して国内の就職先が少なく、ベトナム人が親日的で勤勉で真面目な気質と言われています。
ベトナムの送出機関の状況について
ベトナムの政府認定送出機関は JITCO によると 2018 年 8 月 31 日時点で 268 社あります。
送出機関は、ベトナムにおいて技能実習希望者を募集、面接採用した上で 導入の日本語教育を実施しています。
ベトナムの送り出しの企業側との面接を行い、合格者を対象として更に日本語教育や、実習先における技能の習得、日本の文化やマナー等を学ぶ。
最初の採用から実際に日本に入国する期間は約半年程度です。
日本入国後は日本の監理団体で原則 2 ヵ月間の講習を行い、実習先と雇用関係を結び日本での実習がスタートする流れです。
日本での生活になじめるように、ベトナム送出機関は基本的に全寮制であり、授業を行う教室の他、食堂 や寮も完備、一部ではコンビニエンスストアやカフェ等も設置しています。
ベトナムにおける送出機関における実習費用は、今回視察した機関でのヒアリング ではおおよそ 40 万円~70 万円程度で全額実習生の自己負担になる(国によっては助成制度がある)。
送出機関の収益源は、この技能実習生からの実習費用に加え、日本 の実習実施企業(技能実習生の就労先)からの月額の管理手数料が中心となります。
送出機関に関しては、日本語教育等の教育内容の充実は当然であるが、採用機能が重要でしょう。
採用が苦戦すると質の悪いブローカーからの採用を行わざるを得なくなり、技能実習生の費用負担が増し、技能習得よりも金銭的な目的での入国が増え、日本国内での失踪等のトラブルにもつながりやすくなります。
まとめ
ここまで、外国人派遣制度と法改正、製造業者とベトナム人の相性の良さを見てきました。
製造業経営者が外国人労働者を雇おうとした場合は、ベトナム人を第一候補にするのも良いでしょう。